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第60話

綾人は昨夜のことを瑛介に話した。

瑛介はそれを聞いて沈黙した。

彼の沈黙する様子を見て、綾人は続けて言った。

「もしかして彼女は来たが、ちょうどバーの外で私たちと奈々を見たから、出てこなかったのではないか」

その一言が瑛介の心を衝いた。

彼の細長い目を微か細くし、しばらくして否定した。

「ありえない」

綾人は眉を上げた。

「お?」

「彼女は奈々に恨みがない。なぜ奈々を見て出てこない?」

そう言って瑛介は自嘲的に笑った。

「彼女は単に俺に会いたくない、俺のことなんて気にしたくないのだ」

綾人は言葉を失い、薄い唇を噛みながら何か考えているようだ。

二人はまた長い間沈黙し、瑛介の携帯が鳴り響いた。奈々からの電話だと綾人はそばで見た。

瑛介が電話に出る前に、綾人はため息をつきながら一言を聞いた。

「自分が本当に欲しいものは何かを知らないのか?」

それを聞いて、瑛介は足を止めて振り返った。その時、綾人はもうドアを開いて出て行っており、瑛介だけが携帯を持ってその場に立ってぼんやりしていた。

「本当に決めたの?」

昨日はまだ弥生を心配していた由奈は、今日は新しい良い知らせを耳にするとは思わなかった。

「うん」

弥生は微笑を浮かべて頷いた。

今彼女は、未来を見えたように感じた。

やはり、人は決断を下すことで、迷わなくなるものだ。

以前はどうすればよいか分からなくて、自分の未来が何も見えなかった。

しかし、彼女が本当に決断を下したとき、多くのことが突然明らかになり、次に何をすべきか、将来何をすべきか、彼女はしっかりと考えることができた。

なぜなら、彼女はその目標に向かって努力しているからだ。

「よかった」由奈はにっこりと彼女の手を握った。

「本当に嬉しく思うわ。そうだ、子供の名前は考えたの?」

それを聞いて、弥生は唇がひきつけを起こした。

「今はまだ小さいのに、そんなに遠くまで考えるの」

「遠くないよ、名前を考えて、将来生まれたらそのまま使えるから。それにね、子供を育てるなら、家を買わない?」

「うん、離婚したら新しい家を購入するつもりよ。でも……あくまでも今の考えで、家族に相談しなければならないわ。彼らは海外で働いているから、私とこの子を受け入れてくれるなら、家族
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